約 2,287,909 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1874.html
“っぅ…やばいわね” あたしはさっき飲んだジュースに猛烈に当たり散らしたい気分だった。 今日は日曜日。あたしはバカキョンのために家庭教師をしてやっていた。…別にキョンの事が心配だからとか、一緒にいたいからって訳じゃないんだからね。ただ…そう、補習とかになって団の活動をサボられると困るのよ! …で、今あたしの目の前にはキョンが座っている。真剣な目で問題を解いてるキョン。間違ってるんだけどね。 でも、今のあたしにはそれをバシバシ叩きながら指摘する余裕がない。あたしは足元にある空のペットボトルを見つめた。 まずいは…かなりまずいは。調子に乗ってあんなに飲むんじゃなかった。…これはキョンが悪いのよ! 『ハルヒ、まあ、飲め。暑苦しくてたまらん』なんて言うから。あたしもついつい…だいたいキョンの覚えが悪いから怒鳴って…だから喉が渇くのよ! “…ぁぅ…” やばい、本気でやばい。よりによってなんでこんな日に断水?!水道局の怠慢だは!ダムに水がないなんて嘘よ。あたしのダムはもう満水なのよ…。 『ぁぁ…』 思わず声が漏れる。キョンが怪訝そうな顔で見てる。あたしは横座りしていた足を組み変えて正座にする。 “こうすれば踵が当たって直で押さえられるは!”まだいける…と思うけど。断水解除は4時だから…後30分ね。もっと早く動いてよ時計… まだ、マヌケ面でこっちを見ているキョン。 『ハルヒ、顔が赤いぞ、汗も凄いし。大丈夫か?暑いのか?』 なんて聞いてくるし。大丈夫そうに見えるの?滴る汗を拭うあたし。 て、あんた何クーラーの温度下げてんのよ!嫌がらせ?もう!バカキョン! …“ヴーーン、ヴーーン ” その時、床に置いてあったキョンの携帯のバイブが床を伝わり僅かな振動をあたしの身体に与えた。 『…ひゃっ…』 “…プシュッ” あっ、あれ?今のはまさか? “ひょっとして…今のはひょっとして…”何か生暖かい感触が下着の中に広がる…。 今、あたしちびった?愕然となる。すぐに確認したいけど今はキョンがいるから無理。今だけどっか行ってよ…キョン。 あたしは祈った。そしたらキョンの奴電話をもって立ち上がり『悪い。親からだ。下で電話してくるは。すぐ戻る』ですって。 部屋を出て行こうとするキョン。チャンスよ!ハルヒ。って…キョン歩かないで…今のあたしに振動は…振動は…。 “プシュッ…ジュッ” …ぁっぁ…えっ?う、嘘… その時のあたしにはもう一刻の猶予もなかった。 キョンが部屋を出るのを見ると速攻でスカートの中に手を入れ下着の上から直接股間を押さえる。 “グジュッ…” あたしの下着は濡れていた。信じられない現実…そして今も染み出すように出てる液体。 “止まれ!止まれ…止まって…お願いだから… 団長たるあたしがこんなところでお漏らしなんて…” 心の中で祈りながら押さえ続ける。 祈りが通じたのか、ちょっと出ちゃったからなのかはわからないけどなんとか止まった…。 …恐る恐る手を離して下着を見る。 “見たくはないけど現状は確認しなきゃ” 純白の下着は薄く黄色く色付き、濡れてしっかりと透けていた。そして白のミニスカートにも…。 “あ、あたしキョンの家で…” 目の前が真っ暗になった。軽いパニックになる。 その時あたしの中でもう一人の冷静なあたしが囁いた。 “大丈夫よ!ハルヒ!まだキョンには気付かれてないわ!今ティッシュを使って吸い取ればごまかせる!” あたしは冷静な自分を取り戻した。幸い今は尿意が引いている。 あたしは部屋の隅に置いてあるティッシュに向かった。 …刺激を与えないように部屋の隅に向かう。 あと…3歩…2歩…1歩…。 ティッシュの回収成功。作戦の第一段階は成功ね。あとは元来た道を戻るだけ…。 中腰、擦り足で元の場所に戻るとあたしは下着とスカートからおしっこを拭った。 …その時、今迄の比じゃないの尿意があたしを襲った。耐え切れない欲求…。 『ぅぅぅ…』 “負けない…あたしは負けない…” 時計を見る。後5分。この波さえ乗り切れば後は天国よ!ハルヒ! ティッシュをもった右手を力いっぱい股間に押し当てる。 … … … 『ガチャ…』 ドアが開く。 『あースマン、ハルヒ。ちょっとこいず…いや、親がなうるさくてな』 あたしはとっさにドアに背中を向ける事しかできなかった。 全身の震えが限界に近づいてる現状を教えてくれる。 キョンはそんなあたしに近づいてきた。 落ちていたティッシュを拾うのを気配で感じる…。 ダメよ!キョン!そのティッシュはあたしの…あたしの…心の中で絶叫する。 キョンは震えるあたしと濡れたティッシュから想像したのだろう…明らかに検討違いな事を言ってきた。 『大丈夫か?ハルヒ…おまえ泣いてるのか?辛い事があるなら話してみろ…』 そう言うとキョンは“ポン”と、あたしの肩に手を置いた。 『…ぃ…嫌…ダメ…』 今のあたしの我慢はその衝撃に耐えられなかった。 『…あっ…あっ…ぁぁ…』 “ショワーーーッ!” という布越しに液体が吹き出す音が聞こえる。それは“びちゃびちゃ”と床を打つ。あっという間に広がる水溜まり。白い下着が黄色味をおびなら透けていく。 『ダ、ダメ…見ないでキョン…!』 それだけ言うのが精一杯だった。出せた事への気持ちよさよさより、下着に広がる生暖かい液体の感触とキョンに見られてることへの羞恥心の方が大きかった 一度出始めたものを止める事はできなかった。 下着だけでなく、スカート、靴下にまで不快なものを感じる。 あたしにはその時間が永遠にも感じられた。 “ちょろ…ちょろろ…” やっと勢いがなくなり、そしてあたしのおもらしは終わった。 あたしは自分に起こった事が信じられなかった。高校生にもなって…ましてや他人の、キョンの前で…消えたくなるような恥ずかしさ…。 『…ハ、ハルヒ?』 キョンの声が背後から聞こえる。突然の事で動揺してるのか声が震えてる。あたしは恥ずかしさで答える事も顔を上げる事もできなかった。 …どうしよう…おもらししちゃった…。 謝らなきゃ…とにかく早くキョンに謝らなきゃ…。 焦りと謝罪したいそんな心とは裏腹にあたしの口をついたのは理不尽な責めの言葉だった。 『…あんたのせいなんだからね…あんたが押さなきゃ全然問題なかったんだから…』 嘘…キョンは悪くない。ジュースがぶ飲みして、もらしちゃったのはあたし。 それでもあたしの理不尽な言葉は止まらなかった。 『…せ、責任とりなさいよ…責任とらなきゃ死刑なんだからね…』 …情けない姿を晒した自分と素直に謝れない自分が許せなかった。 だからキョンに八つ当たりしてるだけ…。解ってる。責任のとりようもないことも、ましてやキョンに責任がないことも…自分が子供みたいなことを言ってることも…。 … … … …キョンはそんなあたしの理不尽な怒りに対して何も言わなかった。 足が濡れるのも構わずあたし前に立つと、一言“ゴメンな”と言ってあたしを優しく抱え上げ、お風呂場に連れて行った。 …お風呂場についた私の服と下着をキョンは優しく脱がせてくれた。 あたしのおしっこのついた物なんて触りたくもない筈なのに…嫌な顔一つしないで…。 それに今はあたしの出したものを片付けるために部屋に戻ってるし。 『シャワーでも浴びてすっきりしろ …俺は着替えを用意するあと、お前の…始末をしとく』の一言を残してあたしを一人にしてくれた。 “…優し過ぎるよ…キョン…” キョンの前では団長として弱みは見せられないと思って我慢してた涙が頬を伝う。 お風呂場の中はあたしの出したおしっこの臭いがうっすらしていた。 シャワーを浴びながらあたしは考える。 “あたしキョンに凄いとこ見られちゃったな…キョンになんて謝ろう? どうしよう…顔合わせられないよ…” “トントン” ドアを叩く音。意識を戻す。 『…ハルヒ、着替えここに置いとくぞ。…あ~それとだな。気にすんな。誰にでも…『わかったわよ!そこに置いてって!!』』 あたしは精一杯虚勢を張り声を出す。そして言ってから後悔の念に押し潰されそうになる。 …またやっちゃったは。今なら顔合わせないで謝ることもできたのに…。 あたしの中で“不安”が広がった。 …“不安?”なんで不安なんだろう? おもらししたことを他人にバラされたらどうしよう…って不安? …違う。キョンはそんなことするやつじゃない。 そんな事は解ってる。 じゃあ、何の不安? …そう、キョンに嫌われるんじゃないか?って不安。汚い女だって見捨てられる不安… なんで嫌われるのが怖いの? …それはあたしがキョンを好きだから。 初めて自分の気持ちに気付いた…。 シャワーを出る。 …身体はすっきりしたけど心は晴れない。 あたしはキョンの用意してくれた服を着る。 今あたしはキョンの部屋の前にいる。 早く入らなきゃ…謝って、そしてキョンに確認しなきゃ… でもあたしの足は動かなかった。 きっと嫌われちゃった。見捨てられちゃう…って不安が大きくなる。寒くないのに膝が震える。 『ハルヒか?もう片付けたから入って来いよ』 気配を察したのかキョンがあたしを呼んだ。 『ガチャッ…』 扉を開けて中に入ると部屋の中は綺麗になっていた。 キョンの顔をまともに見られない。でも謝らなきゃ… 『…ゴメンなさい……キョン…こんなあたしの事なんて嫌いに…なっちゃった……よね』 最後のほうはかすれてよく聞き取れなかったかもしれない。 あたしは泣いていた。 いつの間にか『ゴメン…』と『嫌いにならないで…』を連発していた。 そんなあたしに近づいてきたキョンはあたしを優しく抱きしめてくれた。 『俺のほうこそゴメンな。おまえが我慢してるのに気付いてやれなくて…俺が気付いてやれればなんとかできたかもしれんのに… だからゴメン。…それに嫌いになる訳ないだろ。誰にだって起こりえることだ。だからもう気にすんな。もう済んだことだ…。もちろん誰にも言わない。俺も忘れるからおまえも忘れちまえ!』 『だから泣くな!…いつもの傍若無人なハルヒに戻ってくれ。俺はいつものハルヒが…その…なんだ…好きなんだ!』 えっ?今キョン“好き”って…あたしのこてを。嫌われてないだけじゃなく好きって…。 あたしの涙は止まらなかった。でもそれは今迄の不安から来るものじゃない。嬉しさから来るものだ…。 そんな泣き止まないあたしを見てキョンはいつもの“やれやれ”って表情じゃなく、今迄見せたことのないすっごく優しい眼差しであたしの口を塞いできた…自分の口で…。 そして…。 翌日文芸部室にて… …今日も暑いわ。なんでこんなに暑いんだろ?授業中“夏だからだろ?”なんて月並みな事を言ったキョンには既に罰ゲームを言い渡してある。 今、眉間にシワを寄せながらパンツ一丁にエプロンで席に座ってるわ。涼しそうねキョン。パンツを残したのは団長としての優しさよ!感謝しなさい! そんなキョンを見てニヤニヤしてる古泉君を見てると“ホモ説”もあながち間違いじゃない気がするのは気のせい? 『みくるちゃん!お茶!頭痛くなるくらい冷たいやつよ!』 今日何度目かになる注文をみくるちゃんに出す。 その声に反応してあたしを見るキョン。 お馴染みの“やれやれ”って顔で『飲み過ぎだろ!そろそろ止めとけ…』って言ってきた。 …っと…まあ、そうね。みくるちゃんも大変そうだし、また昨日みたいなことになったら嫌だからね。ここらへんで止めとこうかしら。 …でも、今みたいな“やれやれ”な顔じゃなく、あたしを慰めてくれた時のキョンの…今はあたしの“恋人”のあの優しい顔が見れるならまた……… そんな考えを振り払うかのようにちょっと乱暴にコップを置き、いつもの調子で叫んぶ。 『ねえ!キョン!!』 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/4740.html
第一話 「おはよう、涼宮さん。最近嫌な事件が続いてるのね」 あたしが朝教室に着くなり阪中さんが話しかけてきた。 「おはよ。なにそれ?どんな事件?」 そう返事すると少し驚いたような顔をして教えてくれた。 「知らないの?最近この辺りで女子高生が誘拐される事件が続いてるのね。犯人はまだ捕まってないし…怖いのね…」 えっ?そんな事件があったなんて全然知らなかったわ…これは気になるわね… 「涼宮さんも気をつけた方がいいのね。それじゃあまたなのね」 そう言い残し自分の席へと戻って行った。 それと入れ替わるようにキョンが教室に入ってきた。 「おう、ハルヒ。おはよう。…どうした?」 ボーッと考え事してたからだろうか、あたしの顔を覗きこむようにたずねてきた。 …って顔近いわよっ! 「キョン!大事件よ!」 さっき聞いたばかりの事件をキョンに話した。 「ああ、その事件なら俺も知ってる。昨日のニュースでもやってたしな。 嫌な話しだぜ…」 なんだ、知ってたんだ…それなら話は早い! 「いい?これは放っておけない大事件だわ!早速今日の放課後からSOS団で調査開始よ!」 あたしは椅子の上に立ち上がり、しかめっ面をしたキョンへと高らかに宣言した。 「おい、ハルヒ!バカな事言うな。警察でも探偵でもない俺達に何ができる?」 むっ…なに呆れた顔してんのよっ! 「もし事件に巻き込まれたらどうするんだ…危険な目にあうかもしれないし…俺は…嫌だぞ、ハルヒがいなくなったりするのは…」 とつぶやくのが聞こえた。 「え…それってどういう―」 「と、とにかく事件のことは警察にまかせておけよ。わかったな?」 「わ、わかったわよ…」 急に話を終わらせたキョンにしぶしぶと答えるとちょうど岡部が入ってきた。 「みんな、おはよう。ホームルーム始めるぞ。それとハンドボールはいいぞ!」 岡部の戯言が耳に入らないくらいあたしはドキドキしていた。 さっきの言葉、どういう意味だったのかな…もしかしたらキョンもあたしのこと…好き、なのかな? いつか…この大好きって気持ちをキョンに伝えたい。今週の不思議探索の時に…頑張ってみようかな… その日あたしは授業中もずっと一人でにやけていた。かなり危ない人みたいね…今日はすごくいい日だわ!記念日にしてもいいくらいに。 そんなことを考えているとあっという間に放課後になった。 「キョン!掃除なんてさっさと終わらせて部室に来なさいよ!遅れたら死刑なんだから!」 「はいはい、わかってますよ。団長様」 いつもみたいな会話をして、一人で部室に向かった。 そして勢いよく部室のドアを開いた。 ----------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「あ、涼宮さん。こんにちわー」 あたしが部室に入るとメイド服姿のみくるちゃんがお茶の準備をしようと立ち上がる。 「ヤッホー、みくるちゃん。あれ、有希と古泉くんは?」 「えっと、二人ともクラスの用事で遅れるそうです。さっき部室に来て涼宮さんに伝えておいてくださいって言ってましたよ」 温度計とにらめっこしながらみくるちゃんが答えてくれる。 「そうなの。…ん?」 机の上に置いてあるものに気づく。編みかけの…マフラーかしら。 「みくるちゃん、マフラー編んでるの?あっ、もしかして好きな男の子に?」 冗談めかして言ってみる。 「え?あぁっー、そ、それは…その…」 んー、顔を真っ赤にしたみくるちゃんも可愛いわね! 「実はキョンくんにプレゼントしようと思って…この前新しいお茶の葉をくれたからそのお礼に。このお茶がそうなんですよ」 瞬間的に思考が凍りついた。 嬉しそうな顔したみくるちゃんがあたしの机にお茶を置く。 ちょっと待って…キョンが?みくるちゃんに?いつのまに…? 自分の中で黒い嫉妬が生まれるのがわかる。 「えへへ、マフラー渡す時にキョンくんにわたしの気持ちを伝えようかなって、ふふ、そう思ってるんです」 その言葉を聞いて、さらに黒い嫉妬は叫びをあげる。 「そん……対……許……わよ」 「はい?どうしたんですか?涼宮さん?」 聞き取れなかったのだろう、みくるちゃんが側に来る。 「そんなの絶対に許さないわよっ!なによ!こんなお茶いらないわ!」 机の上に置かれたお茶を思いっきり床へ叩きつけた。 ガシャーーンと陶器が割れる音が狭い部室に響きわたる。 「な、なにするんですか!せっかくいれたお茶なのに…」 泣きそうな顔でみくるちゃんが睨んでくる。 「SOS団は団内恋愛禁止なのよ?それを…あんたは!」 自分の感情を抑えきれなくなりみくるちゃんに掴みかかる。 「しかも…キョンだなんて…絶対に認めないわ!キョンはあたしのものよ?あんたなんかよりあたしの方がずっとキョンにぴったりだわ!諦めなさい!これは団長命令よ!?」 「わ、わたしだってキョンくんのこと大好きなんです!諦めたくありません!それに…わたしの気持ちなんだから涼宮さんには関係ないじゃないですか!」 思ったより強い力で突き飛ばされあたしは尻餅をついた。 なによ…みくるちゃんのくせに! 目の前が怒りで真っ赤にそまる。 そして気がつくとあたしはみくるちゃんを思いっきり突き飛ばしていた。 「あっ…」 みくるちゃんが後ろに倒れると椅子に強く頭をぶつけ、ガンッと鈍い音がした。 しばらく苦しそうにうめいていたがやがて動かなくなる。 ハッと一気に現実に戻った私は目の前の光景を見つめた… 「み、みくるちゃん?…嘘でしょ…?目を…開けてよ…」 震える手でみくるちゃんをゆさぶる… でも…ぴくりとも動かない。 「そ…そんな…い、嫌…嫌あああああああああああああああああああああああ!」 叫び声が響き渡る。 どうして…どうしてこんな事に…どうすればいいの… その時、ノックの音がして、部室のドアが開いた。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「うー、寒い寒い。っ!おい!ハルヒ…なにやって…」 部室に入ってきたキョンが目を見開いてあたしをみつめる。 最悪…よりによってキョンが入ってくるなんて… 「なんで朝比奈さんが倒れてるんだ?なにがあったんだよ!なあ!ハルヒィ!」 大声で問い詰められて身体の震えがいっそう激しくなった。 どうしよう…このままじゃキョンに嫌われちゃう。嫌だ、嫌だ!そんなの嫌だ! 「脈がない…死んでる、のか…」 キョンがみくるちゃんの脈を確かめながらつぶやく。 「あ、あたしは悪くない…みくるちゃんがキョンの事好きだって言うから…つい…カッとなって…」 「…お前がやったのか?どんな理由があるにしろお前が朝比奈さんを殺したことには変わりないんだぞ!」 すごい顔をしながら睨んできた。 「だってだって…嫌だったもん!キョンがとられちゃうの嫌だったもん!」 必死になって言い訳を並べる…きっとあたしは泣きそうな顔してるんだろうな… もうおしまいね…二度と今までの日常には戻れないだろう。 しばらく沈黙の時間が続く。やがて、 「…ハルヒ、聞いてくれ。俺がにいい考えがある…だから安心しろ」 さっきとはうってかわって ものすごく優しい声でキョンが言った。 最初キョンの言っている事がよく理解できなかった。てっきり怒鳴られてすぐ警察につきだされると思ってたのに… 「それって…あたしを助けてくれるって、意味…?」 「そうだ…こんな時だけど…俺はハルヒが好きなんだ!だから…離れたくない!」 「あたしも…嫌。大好きなキョンと離れたくない…ずっと、ずっと一緒にいたい!」 我慢しきれず涙がこぼれる。 「絶対俺がなんとかするから。頑張って二人で乗り越えよう。な?」 そう言って優しく抱きしめてくれた。 「うん…うん。二人で…頑張る!」 あたたかいキョンの腕の中で、あたしは泣いた。 こんな状況だけどすごく幸せで嬉しかった。 だってそうでしょう?ずっと好きだった人と両想いだったことがわかったんだから。 でも、この時あたしは気付いていなかった。自分の犯した罪の重さを、そして、どんな結末が待っているのかを… --------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「とりあえず…もうすぐ長門と古泉が来るから急いで死体を隠さないとな」 キョンは辺りをみまわしながらいろんな所を探ってる。 「よし、掃除道具入に隠しておこう。後でもっとわかりにくい場所に移動させれば大丈夫だ」 キョンがみくるちゃんの死体、かばん、制服などを掃除道具入につめこみ、床にちらばった茶碗の破片を片付けた。 「これでよし…っと。ハルヒ、二人が来てもいつも通りふるまうんだぞ?」 「うん…わかった。」 私は団長机へ、キョンはいつもの場所へと座る。すると、 「いやあ、遅れてすみません。」 「……………」 相変わらず笑顔の古泉君と無言の有希が部室に入ってきた。 「おう。遅かったな。今日はどのゲームにする?」 「おや、あなたから誘ってくるなんて珍しい。そうですね、今日は―」 キョンの向かい側の椅子に座る古泉君。有希は窓辺に座って読書を始める。 私はネットサーフィンでもしようとパソコンの画面に集中する。けど、どうしても視線は掃除道具入へといってしまう。 「涼宮さん?さきほどから落ち着かない様子ですが、どうかされました?」 キョンとチェスを始めた古泉くんが聞いてくる。 「ああ、こいつ朝から体調が悪いみたいなんだ」 「そう、そうなのよ!でも平気だから気にしないで」 キョンのフォローで助かった。 「そうでしたか。ところで朝比奈さんの姿が見当たらないようですが、どこへ行かれたのでしょう。先程部室に顔を出した時にはいらっしゃったのですが」 いきなりみくるちゃんの話題が出て思わず息をのむ… 「あ…えっと…」 「朝比奈さんならお前らが来る前に用事を思い出したとかで先に帰っていったぞ」 またもキョンがフォローしてくれる。 でも、少しずつ身体が震えてきた… 「なるほど。…涼宮さん?本当に大丈夫なんですか?震えていますが…風邪ですか?無理なさらないほうが…」 心配そうな顔をした古泉くんが話しかけてくる。 「うん。そうね…今日はもう帰るわ。このまま解散にしましょ」 「おう。わかった」 「かしこまりました」 「……………了解」 それぞれに答えみんなが帰り支度を始めた時、 ガタッ…! 掃除道具入から音がした。 っ…!なんで…!こんな時に! みんなの視線がいっせいに掃除道具入へとむけられる。 気になったのか有希が立ち上がり掃除道具入の扉に手をかける。 どうしよう!まずい、まずいまずいまずい… もう、ダメだ…諦めて目をつぶった時、 「長門、中のホウキが倒れただけだろ。気にするな」 有希を止める声が聞こえた。 「………………そう」 有希はほんの少し怪訝そうな表情を浮かべたが、やがて扉から手を離した。 それを見てあたしは気づかれないように息を吐き、そのまま椅子にもたれかかった。 本当に危なかった…キョンが止めてくれなかったら今頃… 「それじゃあお先に失礼いたします」 「………お大事に」 二人が先に出て行くと部室には私とキョンだけが残った。 「ふー、なんとか誤魔化せたな。大丈夫か?ハルヒ」 「う、うん…大丈夫…ありがと」 キョンは掃除道具入を開けて中を覗きこんだ。 「死体を運べるくらい大きなバッグを探してこなきゃな。ちょっと待っててくれるか?」 そう言うとキョンは部室を出ていこうとした。 「キョン!なるべく…早く戻ってきてね」 「ああ。わかってるよ。すぐ戻るからおとなしく待ってろよ」 キョンを見送って一人になると今さらながら自分のしでかした事に頭を抱える。 これから一体どうなるんだろう… 誰にも見つからないでうまく隠せるのだろうか… 私は椅子に座ったまま目を閉じた。
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/264.html
ハルキョン家を探す その5から 「あたしたち、幽霊屋敷に住むわ。SOS団のみんなも一緒よ!」 いやハルヒ、『前回までのあらすじ』を強引に一言で言ってしまえば、確かにそういう風にもまとめられるかもしれないが、それだと誰も安心も納得もできないぞ。 俺は、例の不動産屋の店主との出会いのいきさつから、ついさっき訪れた古い洋館のだいたいの部屋数まで、差し障りのなさそうな部分をかいつまんで話したが、それでも主賓クラスのスピーチの長さになってしまった。ハルヒの親父さんが「ジー・ジェイ」とかなんとか言ってた気がするが。 頃は合格発表の晩、ところは涼宮オヤジの縁が深い、俺とハルヒも再開店1周年の際に訪れたことのある洋館風のレストラン、主催俺の家アンド涼宮家、協賛SOS団と愉快な仲間たちでもって開催された「ハルキョン超合格宿がパーティ」(誰だタイトル考えた奴?)は、ハルヒと俺にとって予想もしてない文字通りのサプライズ・パーティであった。 「店貸し切って、もし不合格だったら、どうしようと思ってたんだ?」 喉カラカラで演壇から降りてきた俺を出迎えたのは、メイド・コスチュームの世界一似合うアンジェリーナ朝比奈さんでも、本当に本職メイドではないんですか森さんでもなく、どこの黒執事かという出で立ちのニヤケスマイルの副団長であった。ついでに言うと古泉が俺に手渡したグラスには、シャンパンでも六甲ワインでもなく「ただの水」がなみなみと注がれていた。 「いえ、六甲の水だそうです。地元ですから」 「そんなことはどうだっていい」 「不合格……の場合ですか? ほとんど想定外のことですが、その時はその時で、残念パーティということにでもなったんでしょうか。ああ、一応、懺悔室なるものは、涼宮さんのお父様の意向で用意してありますが」 ……親父さん、あんたって人は。 「でも、万が一でも、そういうことにはならなかったでしょう」 「ハルヒが望んだ、ってのは無しだ。俺たちは見事に一浪したし、俺なんかは右手を折ったんだぞ」 しかし持論を翻さず、ハルヒの心理専門官を自認する古泉は落ち着き払った口調でこう言った。 「涼宮さんが、あなたが怪我をすることを望むとは考えられません」 「すると、こういうことか? あいつは俺と二人っきりで暮らすよりも、SOS団での共同生活を望んだ。そのために、俺たちの進学は1年間猶予され、その間に怪しげで居住スペースを十二分に備えた幽霊屋敷が登場したと?」 「まあまあ。SOS団で住むという話は、我々もさっきが初耳なんですよ。いろいろと考える必要はあるかもしれませんね」 世の中で最も絡むのに適さない相手、グレート・ザ・のれんに腕押しの腕章をすぐにでも贈呈したいこの男に、どうやら俺は絡んでいるらしい。多分、少々落ち込んでいる。そうとも、自覚はある。 「まあ、元気を出してください」 古泉、それダメ押し。「あなたは落ち込んでいる」と言外に断定しちまってるぞ。こういう時は、平凡な言葉ほど効くって本当だな。 「今回の企画の中心、涼宮さんのお母様が、あなたの家やSOS団に連絡され、説得に当たられたのですが、その間、誰も不合格なんて事態を微塵も考えなかったと思いますよ」 なんとでも言ってくれ。 「今回の結果は、決して幸福な偶然が運んで来たものではない。そう考えると、少しは誇らしく思えてきませんか?」 「こら、キョン!! あんた、今日の主役でしょ! すみっこで何ごちゃごちゃ話してるのよ!」 「姫がお呼びですよ、殿下。……できれば、披露宴もこんな風にやりたいものですね」 「誰と誰のだ?」 やったとしてもお前には司会もスピーチもさせんぞ。谷口、国木田と3人で「てんとう虫のサンバ」を歌わせてやる、しかもラップVer.でだ。 演題の上で飛び跳ねながら、本日最高の笑顔で叫んでいるもう一人の主役、ハルヒの方へ、俺はよろよろと歩いていった。 宴は、俺の片付かない気持ちとは裏腹に、大いに盛り上がった。 なかでも涼宮家の母・娘の出し物は、基本的には一般人の集まりであろうこうした宴では、もはや超反則クラスで「プロの方おことわり」の域に達していた。 いつだったか、俺が軽くリクエストしたせいで決まった、母娘二人による連弾:一台のピアノを母と娘の4つの手が演奏するやつは、最初は誰でも知ってそうなクラシックの曲からゆったりと始まったが、次第にアレンジはアップテンポになり、曲調と技巧が頂点に達したところで終わる、会場総立ちモノだった。 そういや、いつか練習しすぎで筋肉痛になったハルヒが言っていた。 「For piano four hands、連弾のことをこう言うの。ピアノはオーケストラに出せる一番低い音から一番高い音まででるけれど、所詮2つの手、10本の指じゃ限界があるわ。でもね、4つの息の合った手があれば、オーケストラにだって負けないのよ!」 続いてハルヒがピアノを弾き、ハルヒ母が、水のように透き通った、どこか現実的でないほど美しい声で、アリア3曲を歌った。以下は長門による簡潔な解説である。 「すべてヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作曲によるもの。1曲目ケッヘル番号51(46a)歌劇『みてくれのばか娘』からアリア『あたし恋をしてるの』、2曲目ケッヘル番号217 ガルッビ:歌劇『ドリーナの結婚』への挿入曲 アリア『あなたの心は今は私に』、3曲目ケッヘル番号440(383h)アリア『あなたに望みを託しますわ,ああ,愛する夫よ』」 一転して会場は水を打ったように静かになり、静寂がゆっくりと盛大な拍手に変わっていった。 二人は一礼して、ハルヒの母さんは親父さんのいる席へ戻り、ハルヒは俺の隣にやってきた。 「すごいな。ぶっつけとは思えん」 「ずっと練習はしてたもの。今日やるとは思わなかったけど」 「ピアノもよかったが……」 「母さんでしょ? まあ、あたしに歌わせるつもりだったみたいだけどね」 「どうしてやめたんだ?」 「あんた、歌の内容、知ってる?」 「長門から歌のタイトルは聞いた」 「そう」 と言いながら、ハルヒはその辺りの食べ物を手当り次第に口に詰め込む。 「今日はじめて席について食べられるわ。誰のお祝いだか、わかりゃしないわね」 「まったくだ」 「ん? なにをぶーたれてるのよ?」 「ぶーたれてなんぞない」 ハルヒはおれのほっぺたを両方の手でつかみ、うにうにと伸ばす。 「さあ、ぐーとでも言ってみなさい」 「ぶー」 ああ、あわれ。我は子豚なり。 度を過ぎた宴はやがて終わり、手回しよく配車されたタクシーが参加者をそれぞれ送って行った。これだけ、手回しの達人たちが揃っているのだ、不思議というには当たらない。 「おーい、今日の主役その1」 と向こうで呼んでいるのはハルヒの親父さんである。 「もう残ってるのは俺たちだけだぞ」 「あの、うちの家族は?」 「妹ちゃんが寝ちまったんで、早々に引き上げられた。愚息をよろしく、とのことだ」 「やれやれ」 「今日は泊まってくだろ?」 「ええ。お邪魔します」 「すまんが、そこでつぶれてる主役その2を、叩き起こして自分の足で歩かせるか、担いで来てくれ。なあに、そのままさらっていけ、とまではいわん。そこのタクシーまでだ」 「すみません。選択肢その1は無理です」 「涼宮家でも、母さんだけができる荒技だ。……今日はずっと浮かない顔だな」 「いや、ちょっと疲れただけですよ」 「疲れているか、ぶーたれてるかぐらいは、バカ親父にも区別がつく」 そう言って親父さんはゆっくりと歩いてきた。そして羽目を外して酔いつぶれ、テーブルに突っ伏して寝ているハルヒを見下ろす。 「幸せな奴だ」 親父さんはハルヒの頭をぽんぽんと叩いた。 「こいつは好きなことやって、何回かは頭ぶつけて転んで、たとえそれでも好きなことやって一生過ごすんだろうさ。キョン、こんな奴はいいから、おまえ自身が幸せになれ。大抵のことは、それで何とかなるだろう」 「……キョ〜ン、もう食べられないわよお、……むにゃむにゃ」 ハルヒ、ベスト・タイミングにしてベスト・コンテンツの寝言。親父さんは「おまえはオバQか!」と古いツッコミを入れている。やれやれ。俺も思わず笑ってしまう。たとえば歳を取り、懐かしく思い出したりするのはきっと、なんでもないこういう瞬間なんだろう、とふいに思った。 「おい、ハルヒ、おぶされ。帰るぞ」 「……キ、キョン?……あんた、あたしに……何しようってんのおぉ……ぐう」 「何もせん。家に帰るんだよ」 「……あ、あたしの……家はねぇ……」 背中をハルヒに向け、椅子に座っているこいつの高さにあわせてしゃがむ。親父さんがハルヒの腕を俺にのっけてくれる。ハルヒの腕が俺の前で交差する。ハルヒの体重が俺の背中に移動してくる。 「……ここに、決まってんでしょ、このバカキョン!」 「ハ、ハルヒ、落ち着け。く、首がしまるっ」 「お父さん、済みましたよ。ん? どうしたの、二人とも? 真っ赤になって」 向こうからハルヒの母さんの声が聞こえる。が、ハルヒの細い腕が、俺の首にはまりすぎるくらいにぴったりすぎて、絞まる……。 「俺は笑い過ぎだが、キョンは窒息しかけだ」 「はいはい」 ぺしりっ、と乾いた音。び、ビンタですか? 「んあ、母さん? って、キョン! 親がいるのに何してんのよ!!」 「ほんと親が二人も揃っていてよかったわ。ハル、もうちょっとで未亡人になるところよ」 手を放し、俺の背中でおろおろするハルヒ。となりで馬鹿笑いする親父さん。ニコニコしながら号令をかけるハルヒの母さん。 「じゃあ、みんな、家に帰りますよ」 「働かざるもの食うべからず、って言葉、知ってるかしら、キョン?」 涼宮家に着いてから、ハルヒの母さんがハルヒを部屋に連れてゆき、自分も寝室へと退散した。 残された俺と親父さんは、居間のソファをそれぞれ占拠し、 「プロポーズになんで花持ってたかって? 女性に贈るのは花と決めてたんだ。ヘタ打って別れたにしても、花なら腐って消えるから物証が残らない。母さん? 『ああ、もらった薔薇はポプリにしました』だと。さすがに変色はするが、香りなら10年は楽に持つらしいぞ。50年ものなんてのもあるらしい。完敗だ」 といったような、多分のろけ話を聞かされているうちに、いつの間にか寝てしまった、ということはどうにか記憶にある。 目が覚めて、俺を見下ろしているハルヒは、すでにハルヒ100%状態であって、見回すと居間には俺一人残され、親父さんの姿もない。 怒ってみせているハルヒの眉の角度を見れば、それが上機嫌を押し隠すための照れ怒りだということはわかる。あと、俺は腹が減っていた。総合的に判断すれば、こちらには一分の勝率もあり得ないではないか。 顔で怒って心ごきげんなハルヒが手渡したのは巻き尺だった。 「はい、これ。部屋の使い方を考えるのに、間取り図が必要でしょ。測ってきて」 「あの広さの洋館を俺ひとりでか?」 とはいえ、せめてもの抵抗を試みる。 「あたしも鬼じゃないわ。親父を連れて行きなさい、どっかで転がってアニメ見てるから、拾って来て。もし寝てたら、死なない程度に叩き起こしてかまわないから」 いや、言おう。ハルヒ、おまえは鬼だ。 「ああ見えて、意外と役に立つわよ」 そんなことは分かってる。性能には何の不足もないだろうさ。しかし、あの親父さんである。 どうして神は、かくも高い能力を、かのような人格に与えてしまったのだろうか。意地悪か?それとも悪戯か? 人を試そうっていうのか? と、あれやこれやを思案していると、のっそりと親父さんが登場した。 「お言葉を返すようだが、バカ娘」 と親父さんはぶーたれる。 「なによ、文句あるの、バカ親父?」 「俺は忙しい」 「36時間寝ないで、ネット・ゲームやってる、あんたのどこが忙しいのよ?」 「それは受け手のポジションに甘んじていたこれまでの俺。これからは送り手の立場に立って世界に向き合うつもりだ。だから忙しい」 「忙しい、つ・も・り でしょ?」 「明日中に『涼宮オヤジちゃんの憂鬱 二ノ巻』をネット配信しなくてはならん」 どうやって、そんなもの……つくったんですか? あと、一ノ巻は? 「もちろんMADだ。足りないところはElanceでお仕事オークションしたら、インドのデザイナーが落札した。すごいスキル・セットでPerlとJAVAとRubyとPHPを使えて、王族みたいな英語でドキュメントまで書けるのに、1時間あたり5ドルで働くんだぞ。どことは言わんが日本にあるのに日本語が通じないサポート・センターとは、どえらい違いだ」 ああ、何ゆえこんな危険親父にWeb2.0を、のれんに腕押しを、猿にモノリスを……人類は、テクノロジーとの付き合い方を、真剣に考えなおすべき時期に来てるんじゃないだろうか。 「あとここだけの話、ハルヒの幼稚園時代のビデオがあるんだが、ニコ動にアップするってのはどうだろう?」 「親父さん、そりゃ犯罪です!」 「俺は親だぞ。だったら『エスパー魔美』はどうなる?」 「あれはバイトでお金を渡してます」 「いつか親になって娘を持ったら、油絵に描いてやろうと思ってたんだが、俺って勝ち組か?」 「実現……してないですよね?」 「母さんにバレた」 「つまんない話してないで、さっさと行ってきなさーい!!」 ハルヒにどやされ、男二人(俺と親父さん)は、道具をひっつかんで走り出す。 その2へつづく
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/526.html
涼宮ハルヒの異変 上 涼宮ハルヒの異変 下
https://w.atwiki.jp/akadama/pages/65.html
「あ~、なんか暇ねえ…」 ネットサーフィンもそこそこに飽きただろうハルヒがぽつり、とつぶやいた。 俺はオセロの石をひっくり返しながら古泉に目配せした。お前の役目だろ。 するとどうだろう、古泉は両手を上げていつもの『参りましたね』ポーズだ。 長期休暇しか役に立たないのか、お前は。 「今日はみくるちゃんもいないし…そうだわ!」 ハルヒは何かを思いついたらしく、イスが後ろに滑っていくくらい勢いよく立つと、古泉の近くへやって来た。 「今日は古泉君で遊びましょう!」 「えぇっ?!」 ハルヒの忠実なるイエスマンが驚くのも無理はない。 「なんでしょう…何を着たらいいのですか?」 「なーんにも着ないわ。」 じゃあ何を、と聞くよりも早く古泉の頭の上に手を置くとハルヒは、 「古泉君を開発するのよ!」 「か…?!」 さすがに俺も驚かざるを得なかったね。開発って…そりゃ高校生が発するような言葉じゃないぞ。 「あ、あの…涼宮さん?意味がよくわからないのですが」 「と言っても思いつきだから何も用意してないのよね…ああもう」 俺は長門を見た。すると、いつも古泉がガサガサしているゲーム置き場を指差している。 まさか用意したとか言うんじゃないだろうな。 ゲームを掻き分けてみると、案の定とんでもないブツが姿を現した。やたら長くて赤い紐に、なんだかよく分からない液体に、バ…これは言葉にはしたくないな。 「おいハルヒ、丁度いいものが見つかったぞ」 「やだ、誰が持ち込んだの?…まあ、いいわ。」 真夏の太陽のような超笑顔をうかべてハルヒは古泉を見た。明らかに笑顔が引きつっている。 先に言っておくが俺は解説役に徹するからな。 「アンタにせっかくの楽しみは渡さないわよ。」 そうかい。 「ただ開発するのもつまらないからあたしなりにルールを設けたわ。引っかかったらランクアップしていくからね!」 逃げるなよ、古泉。逃亡罪は閉鎖空間3日間分だぞ…多分。 「その、何といいますか…できればそういうのは遠慮したいんですが…」 いきなりハルヒが危機感を覚えさせるような不敵な笑みを浮かべた。 「ちちち…引っかかったわね古泉君!」 ルールその一。抵抗・否定的な態度および言動…禁止! 「まずは脱いでもらうわ、着てるもの全部よ!」 さすがのイエスマンも完全に固まってしまった。オイ、ハルヒがぐずらないうちに動いとけ。 「言っとくけど、これ以上逆らったらもっとひどいことするわよ…有希に脱がせてもらいたいの?」 「わ…わかりました」 頬を染めながら俯いて一枚、また一枚と脱ぐ姿は…なんというか、アレだな。 女の子だったら壮絶にエロイ展開なのだが、野郎となると…なぁ。顔赤くすんな、夢に出る。悪夢的な意味で。 古泉は最後の一枚で数分ためらっていたが、覚悟を決めたように脱ぎ捨ててそのまま目をつぶってしまった。 自分が全裸だということを忘れる作戦のようだが…それもひっかかるんじゃないのか? 「さぁて、最初は何にしようかしらね…やっぱりベース作りかしら。」 どうやら縛りたいらしく、赤い紐を引っつかんで何か考え込んでいる。 「どうするんだ?」 「最近縛り方の本を読んだのよね…でも男の子なら菱縄しかないかなと思って」 オイオイ、なんつーもん読んでんだ。花も恥らう女子高生が高度な本読むんじゃありません。 「さ、手を後ろに回して」 「ま、待ってください!…もう少し」 目をつぶりながら両手を前に突き出した古泉は、また地雷を踏んだようだ。運の悪いやつだな。 ルールその二。自分からハルヒに触ること…禁止!! 「ひぃ…っ!!」 「目もちゃんと開けなさい。ああ、もう少し足開いて。」 あっと言う間に縛り上げられてしまった古泉は、足を開いた状態で床に座らされた。 「次はやっぱりコレよね!」 どうでもいいがなんでそんなにノリノリなんだ、ハルヒ。 「だって楽しいじゃない!いつもニコニコ笑ってる古泉君の表情が苦痛に歪むのよ?!ゾクゾクするわ!!」 団長様はよく分からない液体と、男性器を模した物体を握り締めながら満面の笑みを浮かべている。 「滑りを良くしなくちゃ入らないわよね、男の子だもん。」 ハルヒは古泉の股間に正体不明の液体を全部ぶっかけると、後孔に手をかけた。 「そこは…っ!だ…」 「だめ、じゃないでしょ?」 「だ…めじゃ…ない、です…っ」 「否定語を2回重ねたわね…こーしちゃおうっと。」 今のはいささか卑怯すぎないか?ハルヒよ。 持っていたバイブを頭の部分だけ滑り込ませると、スイッチを入れて後ろに少し下がった。 「あああああっ…ふぅ、ん…!!」 「ちゃんと口あけて声出しなさいよ、いい声してるんだから。…ちなみに、あたしの命令は絶対だからね!」 それはいつものことだろ。 「ちゃんと締めないと出てきちゃうわよ、イヤでしょ?」 「はぁ…いっ……うぁあっ…ん!」 古泉的には閉鎖空間とこの状況とどっちがイヤなんだろうか…こっちだな。 「ねえ、使った感想、聞かせてくれない?」 「変なっ…気分に、ぃッ!…なり、ま……すぅッ!!…はァん!」 「よろしい。正直でいい子な古泉君にはご褒美をあげちゃうわ!」 そう言い放つとハルヒは、古泉の中に入っていやらしい動きを続けるブツを一気に押し込んだ。 「ひゃああああっ!!!…そん、なぁッ!おく、までぇぇッ!!」 「なーんにもしてないのに、ココから溢れてる…感じてるのね?」 既に十分勃ったペニスを眺めて終始ニヤニヤしている。こういう職業に向いてるんじゃないか?ハルヒ。 「も、もふぅ…ぁっ!……イ…イっちゃうぅ…ん!!」 「だぁめ。…そだ、出ないように縛っておきましょう、いいわよね?」 ハルヒはあたりをきょろきょろした挙句、傍らに放り出されていたネクタイに目をつけると、ぐるぐるとペニスに巻きつけやがった! 古泉はと言えば、口から涎を垂れ流しながら息をするのも辛そうなほど喘いでいる。言っとくが、うちにはお隣さんがいることを忘れるなよ。 「ハァ…す、ずみやァッ…さん…許し、てぇええっ!」 「キョン、デジカメ。…早く!」 撮るのかよ、コレを…こんなのネットに流出でもしたら確実に自殺するぞ、こいつ。 「大丈夫よ、あたしの家に保管するから。」 余計ダメだろ、と思いつつもフル充電のデジカメを渡してしまう俺はなんなんだろうな。 一枚一枚注文をつけたり口に指を突っ込んだりして撮影していくハルヒに、余裕がないなりに答えている古泉を見ていると…なんだか健気過ぎて泣けてくるね。 あとでジュースの一本でもおごってやるか。間違いなく今日のMVPだよ、お前は。 「さて、と。そろそろかしらね。」 てっきりネクタイを解いてやるのかと思ったら、解きかけたまま指でバイブをさらに深くまで押したではないか。鬼畜め。 「触らッ……ひゃううッ!!」 衝撃が強すぎたのか、精液を腹にネクタイに床にと、派手に撒き散らして古泉はイッてしまった。 「あ~あ、ネクタイにかかっちゃったわね…だから言ったじゃないの、出しちゃだめだって。」 それから服を着てハルヒが帰った後も古泉は泣き続けていた。 「も…もう、ヒッ、お嫁に、いけない…ヒック、ですぅ…!」 何言ってる、ハルヒに貰ってもらえばいいだろ。毎日楽しいと思うぜ?
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3795.html
なあハルヒ? 冗談を言うのも程ほどにしろよ。 皆深夜までも続く演技で疲れてんだからさ、お前がそんな事を言いたくなる気持ちも分る。だが、それは無いだろう。そんな冗談言ってると、某ギャグ漫画の魚雷姉さんが突っ込んでくるぞ。 「冗談?そんなもんじゃないわよ」 違うのか。じゃぁなんだ、ドッキリか。 「ドッキリでもないわ。本気よ」 本気と書いてマジと読むのかハルヒ? 「マジよマジ。マジ過ぎて古泉君が小泉君になるくらいだわ」 其の時俺は、部屋の隅の方で胡散臭いニヤケ男が蹲ってるのが見えたが、まあいいか。“小泉”だし。 「『涼宮ハルヒの憂鬱』の、第二期を中止するわ!」 「代わりと言っちゃあ何だけど、その代わり、新アニメーション化する事にしたわ!!」 新アニメーション化とか何とか言って、どうせまた俺の気苦労が増えるだけだろうな。 ふぅ、やれやれ。 終わり?
https://w.atwiki.jp/yuriharuhi/pages/52.html
二学期がもうすぐ終業式を迎えるある日の午後。 コンビニに行くと言って席を立った古泉は、扉の前でいつもの微笑をたたえ、SOS団アジトを振り返った。 「何か用がございましたらどうぞ」 「古泉くん、あたし雪見だいふくお願いね!」 早速ハルヒが勢い良く挙手して言った。 お前には遠慮と言うものが…ま、古泉だしいっか。 「古泉、ジャンプ頼む。料金後払いでな」 「あのー、古泉くん、ハンドクリームを…あればでいいです。 よろしくお願いします」 朝比奈さんが律義に古泉に頭を下げるのを見つめていると、長門がいつの間にやら古泉の真横に移動していた。 「私も、行く」 ん?古泉に頼んだらどうだ?そのために奴も皆の注文を聞いているんだろうし。 俺がそう思っていると、ハルヒも同じように思ったんだろうな、 「有希、古泉くんに頼んだら? 遠慮してるんだったら大丈夫よ、古泉くんは私が見込んだSOS団の副団長だもん。 断るなんてキョンみたいなケチ臭いことしないわよ!」 市内探索の度に全員分の昼食代やら茶代やらを払っている俺のどこがケチ臭いと言うんだハルヒさんよ。 「いいの?」 古泉、今すぐ俺と代われ。 長門にそうやって上目使いに尋ねられるんならパシリくらい安いもんだ。 「勿論です。どうぞご遠慮なく」 コートを手に取った古泉が長門に爽やかスマイルで促すと、長門は 「昼、少ない日用。羽付き」 とだけ呟いた。 「ゆーきぃー!!!」 長門の一言で外の気温よりも冷たくなった空気の中、真っ先に動いたのはハルヒだった。 「な、長門さん!」 少し出遅れた朝比奈さんも、ハルヒと同じく長門に駆け寄った。 ふたりして長門を抱き寄せ、顔に掛かるふたり分の胸の圧力に身動きできずにいる、なんとも羨ましい状態の長門を古泉から引き離す。 その古泉はと言うと、あまりのことに爽やかスマイルのままその場に固まり、このクソ寒いのに汗を一筋流すなどと高度な技をやってのけていた。 ハルヒと朝比奈さんは俺と古泉から最も離れた場所、つまりハルヒの団長机まで長門を連行して、そこでやっと長門を解放した。 「ゆゆゆ、有希、あなた学校でなったの?」 「なった」 「どうして私に言わないの!? みくるちゃんでも良いわ、とりあえずそーゆー時は知っている人に持ち合わせがあるかどうか聞くもんなのよ!」 ハルヒの物凄い剣幕に、長門はそうなの?とでも言うように首を傾げ、朝比奈さんはハルヒの言うことにこくこくと頷いていた。 「でも、聞くと言っても、そういうのは男の人に聞いちゃだめです」 そこでハルヒ達は全員が全員、俺と古泉の方を見た。 ハルヒは睨み付け、朝比奈さんまでもが咎めるように。 長門はただ見つめただけだったが、なんだなんだ、ハルヒと朝比奈さんのその目は。 俺も古泉も誰にも何もしてないぞ。 何故か冷や汗が垂れてきた。 「それに、古泉くんと有希が一緒にコンビニ行って、よ。 有希がそれ持ってレジに並んだら、古泉くんがなんてリアクションしたら良いか解らなくて困るでしょ!」 「べ、別に何もリアクションなんてしませんが…」 うん、こればっかりは俺も古泉がハルヒに反論するのも無理ないと思うぞ。 俺だって見て見ぬフリをするさ。 「解ってくれましたか?長門さん」 朝比奈さんがまるで姉のように長門に問い掛け、長門がこくっと頷いた。いいね、和む。 「って、悠長にしてる場合じゃないわ!」 ハルヒは自分の鞄に手を突っ込んで小さいポーチを取り出すと、長門の手を掴んで扉までずかずか歩いて行った。 古泉が扉の前から退くと、何故かハルヒは奴を一瞥してから勢い良く扉を開けて部室から出て行った。朝比奈さんもそれに続く。 そりゃな、あんな会話をした後に男共とひとりで残るのは気が引けるだろうよ。 ぱたん、と扉が閉められる音を聞いてから、盛大な溜息をついて俺は机に突っ伏っした。 はー、やれやれ、一気に疲れた。 古泉が壁にもたれ掛かって、そのままずるずると床にへたり込む。 こりゃいつものオーバーリアクションじゃなくて素っぽいな。当然か。 「それにしても、驚きました」 「ああ、宇宙人の長門にもそーゆー…」 「近頃のコンビニって何でも置いてあるんですね」 そっちかよ。今時パンツだって売られてるぞ。 いや、そうやってツッコむ気力さえ今の俺にはもう無いさ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5029.html
俺が朝目覚めると、目の前にハルヒの寝顔があった。 一瞬戸惑ったが、昨日のことを思い出す。 ちなみに俺達は付き合っていたのだが、こういうことをしたのは今回が初めてだ。 俺もまぁしたくないわけではなかったのだが、ハルヒに拒否されるかと思うと怖くて出来なかったんだ。しかし、昨日ハルヒが俺のことを挑発してきて、ついに俺の理性がぶちぎれてしまったわけだ。 そう、俺とハルヒはその何と言うかまぁそういうことをしてしまったわけだ。 ハルヒは中学時代に付き合いまくってたにも関わらず初めてだった様だ。まぁ、俺もそうだったがな。 そんなことを思いながらハルヒの寝顔を見る。 やっぱりきれいだ。俺の自慢の彼女だもんな。 時計を確認すると、そろそろおきたほうが良い時間のようだ。今日は学校もあるしな。さぼろうかと思ったが、ハルヒと二人でさぼったら古泉たちに何を言われるか分からん。 さて、ハルヒを起こすか。 俺が起こすと、ハルヒは比較的寝起きが良いようで、スッと起きた。 「おはよう」 あぁ、おはよう。体、大丈夫か? 「あ、うん///大丈夫そう。ちょっとスースーするけど…」 学校行けそうか? 「大丈夫」 そうか、じゃ早く準備して行くぞ。 「キョン、おはようのキスして。」 あぁあぁ、わかりましたよ。 チュッと軽いキスを落とす。 「ねぇ、もっとやってよぉ」 仕方ねぇな・・・学校前だぞ? 俺たちはさっきより濃厚なキスをした。 「ぷはぁ・・・キョン、朝から激しすぎよ。」 すまん、お前が可愛すぎだからだ。 「もう///」 すると、俺はあるいたずらを思いついた。 おいハルヒ、お前今日俺のいう事聞いてくれるか? ちなみにこういうとき、ハルヒは大抵俺のいう事を聞いてくれる。付き合う以前はともかく、こいつから告白してきたし、ハルヒは俺と二人っきりの時は比較的素直だ。 「何?キョン」 これ挿れて学校行ってくれないか? 「え、これって…」 俺達は昨日、初夜だとは思えないほど激しいプレイをし、道具なども使ったわけだ。 俺の手に握られていたのは、昨日ハルヒの前戯に使ったバイブだった。 「でも…」 いいだろ? 「ばれちゃわないかな?」 大丈夫だよ、お前もスリルは大好きだろ? ほら入れるぞ。 「あ・・・ん」 ハルヒの中にバイブを入れる。 「ん・・・あぁん・・・」 おいハルヒ、もう感じてるのか?一日持たないぞ? 俺の中で何かのサディズムが目覚めてしまったようだ。 まぁ、付き合う以前は散々尻に敷かれていたし大丈夫だろう。 何やかんやあったが、俺達は無事に学校に時間通りについた。何とか一緒に来たこともばれなかったようだ。 そして ハルヒの膣には今バイブが挿入されている。 授業は始まったが、ハルヒは真っ赤な顔をしたままずっと下を向いたままだ。 かくいう俺はチラチラと後ろを確認している。 すると、ハルヒが俺をつついて小さな声で言ってきた。 「キ、キョンー…あ・・・はぁ・・・もう無理っぽいよぉ・・・」 確かに、もうハルヒの秘部から出たと思わしき匂いが充満し始めている。このままじゃばれてしまうかもしれない。 じゃぁ、この授業が終わるまで我慢できるか? 「が、頑張ってみるわ・・・」 休み時間になった瞬間、ハルヒが話しかけてきた。 「キョンー・・・早く抜いてぇ・・・もう無理だよぉ」 そうかそうか、よく我慢したな。 ほら、立て。保健室行くぞ。 ハルヒは立とうとしたが、その瞬間にしゃがみこんでしまった。 「キョン、立てないよぉ、足に力が入らない・・・」 仕方がない、俺はハルヒをお姫様抱っこして保健室に行った。 すると、ちょうど良いことに保健の先生は居なかった。 ほら、ハルヒ、寝転がれ。抜いてやるから。 「ありがと・・・キョン。」 ハルヒは顔を真っ赤にしていて、相当感じているようだ。 俺はハルヒをベッドに寝かせ、先生が来てもばれないようにベッドの周りのカーテンを閉める。 ハルヒ、足を開けろ。 グチョ、ヌチャ いやらしい音を立てながら、ハルヒが股を開く。 俺はパンツの上から、軽くハルヒの秘部を撫でる。 「あ・・・」 ビチョビチョじゃないか、むしろ洪水だ。感じてるのか?ハルヒ。 「ん・・・もう、キョンのせいなんだから。」 俺はハルヒのパンツをずらし、バイブを抜いた。 抜いたあとにハルヒのハルヒの穴を見ていると、何かを求めているようにヒクヒクしている。 「キョン、そんな見ないで・・・」 そうか。 俺はそういうとハルヒのパンツを元に戻した。 正直俺も今すぐにでも押し倒したかったし、俺の息子もかなり大きくなって居た。それにハルヒも感じていて、もっとして欲しいようだ。だが、あえて裏切ってみる。 「え・・・?キョン、もっとしてくれないの?」 何言ってるんだ、ここは学校だぞ?家まで我慢できたらやってやるよ。 「えー・・・」 やれやれ、これからあと学校が終わるまで、俺もハルヒも耐えられるかな・・・ っていうか初めてなのに二人ともやりすぎだろw
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/3119.html
五章 俺は今日も早朝のハイキングコースをいつものように歩いている。ただいつもと違う事が二つ。 一つ目は今日が終業式ということ。だがこれは大した問題ではない。それよりも二つ目のことだ。 俺の体が絶え間なく『奴』を要求してくること。途中誘惑に負けて何度もカバンの中に手を伸しそうになった。 そう、今俺の鞄には注射器が眠っているのだ。っといっても、もちろんまたそれに手を汚すことはしない。 にしても、もううんざりだ。静まれ俺の体。あいつに会いたい。あの笑顔を…… 「キョン!!朗報よ!!」 教室につくと何故か俺の席に座っていた ハルヒは、俺の望みと寸分違わぬ100WATの笑顔で俺に、唾を吐き出しながらそう叫んできた。 こいつの言う朗報とやらが、俺にとって良い方向に作用することは、とても稀なケースなのだが… 今回はその稀なケースに事が進んで行くようだ。 それが朗報の内容を聞かなくても、無条件で確信出来る。 ああ…この笑顔のお陰で俺の中にいる『奴』の存在を忘れられる。 アンダーグラウンドから、いつもの日常に戻って来たような安心感だ。 「何惚けた顔してんのよ!」 おっと、安心が顔にも出てたようだな。 「…で何だ?朗報というのは?」 いつもの口調を演出し、答える。 「みくるちゃんよ!みくるちゃんが帰って来たの! 昨日みくるちゃんから電話があってね!もうこっちの時代に来てるらしいわよ!」 何てこった!こりゃ本当に朗報だ!まさかこいつからこんな良い報せが届くとは… 思わず顔がニヤけてしまう。だけど一つ気になるな。 「だがハルヒ、何でまた朝比奈さんが帰って来る事になったんだ? また力が戻りました、だなんてオチは、夢オチだけにしてくれよ?」 そう思いたい。これ以上懸案事項を増やされたらマジでどうにかなっちまう。 だけど朝比奈さんが戻って来る理由なんて、これくらいしか考えられない。 「何よ、表情と言ってる事が一致しない奴ね!ホントは嬉しいくせに!」 ああ嬉しいね、この上なくだ。 「少しの期間だけよ!何かね?みくるちゃんがホームシック…… いや、ホントは向こうが地元だからこんな言い方も変かもしれないけど、 そんなのになっちゃったらしいのよ。何でもシロクジ中、あのテレパシーみたいな力で 『ふぇ~~~ん、皆に会わせてくださぁ~い』って上の連中に頼み込んでたんだって!」 それで上の連中がついに折れたって所か。 まあ、あんな天使のような朝比奈ボイスでも夜な夜な聞かされちゃ精神も参るか。 「ま、あたしの能力が消えて、少しは未来人達も少しは融通が利く用になったんじゃない? それともあたしが世界改変した時に、『みくるちゃんが意味もなく時間遡行しても 問題のない世界になりますように!』みたいな感じでチョロっと改変しちゃったのかもね?無意識的に!」 古泉みたいなことを言いやがった。ま、確信犯ではないようだ。 「とにかく!!今日の放課後は久々に全員集合よ!」 そう言うとハルヒは自分の席に戻って行った。放課後か…あの人の出してくれるお茶を、また飲める日がやってくるとは。 そんな楽しみにしてる反面 彼女に――他の奴等もそうだが――『奴』に冒されている自分を晒す事に、罪悪感を覚える俺もいた。 でも俺は嘘をついて会うんだろうな。嘘で固めて、その嘘が真実になるまで。 そうだ、今日はあいつにも用があるんだ。 終業式も滞りなく終わり、放課後、俺は屋上で春日を待っている。………来たようだ。 「どうしたの?突然呼び出して。」 本当に不思議そうな顔をしやがる。 「ほらよ」 そう言って俺は注射器と袋に入った粉を春日に渡した。 「ないと思ったらキョンくんが持ってたんだ。」 「お前が俺の鞄に入れたんだろうが…」 怒りを押し殺した声で俺は言う。ここで怒りに任せるのは少し気が引ける、 春日のお陰でハルヒとの関係を元に戻すことが出来たことは確かだ。 「あたしはこんなのやってないし、必要ないからいらないんだけど…ありがとね。」 俺の問いには答えず春日は述べた。 「ああ、捨てるなり何なりしてくれ。もう俺に関わるな。 何でお前がこんなもんを持ってたのかは聞かないし警察にも言わない。」 吐き出す用にそう言うと、春日はクスッと笑った。 その顔が一瞬邪悪に染まったように見えたのは、気のせいだろうか。 「そうだよね。通報したらキョンくんまで捕まっちゃうもんね。 涼宮さんにプロポーズまでしたゃったんでしょ?その関係を崩したくないもんね? 例えそれが、この注射器によって作られた関係だとしても。」 …………!!!俺の中で怒りがたぎる…しかし、それを望んだのは俺自身だ。 俺の何処に向けたらいいか分からない怒りは、 「困ったことがあったら、また力になるよ」と、のたまった春日が去った後の、 屋上の床に意味もなく拳と共に打ち付けられた。 そして何よりもあの注射器を名残惜しく思ってしまった自分にたいして腹がたった。 俺は、本当にあいつらと嘘をついてまで今まで通り過ごしていいのか?その資格がお前にあるのか? 憂鬱とはまた違う気分で部室の扉の前につく。 おや、ハルヒが不敵な笑みで仁王立ちしているな。 「遅い!ふっふ~ん。キョン!この扉の向こうにはだ~れがいると思う?」 こいつが今まで出して来たハルヒクイズの中では、底抜けに簡単だな。 「朝比奈さんと長門と古泉だろ?」 「ぶっぶ~!はずれ!さあ!早くはいるわよ!」 そう言ったハルヒが扉を開けた。少しは躊躇もさせてくれよ。 何はともあれ、俺はハルヒのお陰で迷う事なく扉をくぐることが出来た。 しかしその先で待っていたものは、 「ひゃ~~いぃ、キョンく~ん」 という幸せスペルではなかった。 「おおー!やっと来た!キョンくん、ひっさしぶりだねぇ!元気だったっかなぁ!?」 一瞬、朝比奈さんが未来で洗脳でもされて性格を変えられたのかと、 思ってしまった。いや、紛れも無い、鶴屋さんである。 「あっれ~?何か肩透かしな顔してるよ?お姉さん悲しいにょろ~」 鶴屋さんがニッと笑いながら横にずれると、そこには 「キョ…キョンくん…グスン!お久し振りでしゅ……」 涙をこれでもかと溜めながらも笑みを作り、誰かを抱き締めている朝比奈さんがいた。何一つ変らないメイド姿。 いや、体型が朝比奈さん(大)に近付きかけている。さしずめ、朝比奈さん(中)といったところか。 見ただけで俺の中の毒素を全部取り除いてくれるようなその笑顔は、ハルヒにも負けず劣らずだ。 いかん、俺まで涙が出て来た。 「な~に泣いてるのよ?キョン! あたしからみくるちゃんに乗り換えてみる?」 そう、いじわるそうに言うハルヒの目をよく見ると、うっすらと涙のあとがあることに気付いた。 こいつ、さっきまで泣いてやがったな。こりゃ昨日の電話とやらでも泣いていたと見た。 「いやいや、この歳で今生の別れをした人と再開出来るとは 思ってもいませんでした。」 古泉はいつものスマイルだ。いや、当社比三割増しだな。 長門は…あれ?いないのか? 「あそこよ、あそこ!」 へ?ハルヒが指差す方向には朝比奈さんしか………うお!まさか朝比奈さんの腕の中で小さくなってるのは! 長門はこちらに気付くと、まるで早送りしてるような足取りでいつもの定位置に座り、本を広げた。 表情はもちろん無表情だ。いや、心なしか顔が赤い…か? 古泉が耳打ちしてくれた。 何でも、ハルヒ達がしばらくの間、再開の喜びを分かち合っていると 突然読んでいた本を机に置き、無言で抱き付いたらしい。 その光景を想像すると実に微笑ましいが…顔が近いぞ? そんなやり取りをしているとハルヒが選手宣誓にも取れるような馬鹿でかい声で、俺達を促した。 「とにかく!皆!いくわよ!せ~の!」 「「「「「お帰り!」」」」」 「みくるちゃん!!!!」 「「朝比奈さん!」」 「みくる!!」 「あ……ひな…くる…〃〃」 突然のことだったが、皆示し合わせたように息ピッタリだ。長門はまあ、察してやろう。 そう、このときは、もう『奴』のことなど、これっぽっちも考えていなかった。 そうだ、やっぱり俺にはこいつらが必要なんだ。本当にいい仲間に巡り合えた。 それからは、皆思い思いの、いつもどおりのことを始めた。 朝比奈さんはお茶の準備に取り掛かり、俺とハルヒは勉強道具を取り出し、 長門は本を読みながら古泉のチェスに付き合っている。おい、古泉。舐められていることには気付いているんだよな? ちなみに鶴屋さんは、 「これからどうしても外せない用事があるんだよ~」 と嵐のように去って行った。 それはともかく、ハルヒに勉強を教えてくれるよう、促した時少し曇った顔をしてたな。 すぐに笑顔に戻り、いつもと変わらぬ鬼コーチっぷりを発揮してくれたから気のせいとも言えなくもないが、少し気になるな。 帰り道、俺は古泉を隣りに歩いている。前にはハルヒと長門と朝比奈さんが同じく歩く。 ちなみにハルヒとはプロポーズしたものの、キスはおろか 手をつないで帰ったりすらしていない。全ては受験を終えてからということらしい。まあ、俺もこれには同意だ。 「どうですか?勉強の方は?今日もはかどっていたようですが。」 古泉はいつもの笑顔で俺に話しかけてきた。そういえば俺の暴力事件 のあと、こいつと二人でちゃんと話すのは初めてだな。 「そうでもないな。分からないことだらけさ。ハルヒにも申し訳が立たん。」 そう言うと、古泉は少し考える素振りを見せて意を決したように言った。 「涼宮さんは、今の状況を維持させるべきか迷っているようです。 ああ、あくまでも婚約の話ではなく、受験勉強の話ですよ。 もともと、彼女は東大など興味はなかった。ただ、真面目なことをあなたと一緒に成し遂げたかっただけです。」 「超能力属性をなくしても、やはりお前はあいつの精神分析を買って出るんだな。」 皮肉を混ぜて言う。 「いえ、これは涼宮さんが話してくれた事です。だから、今この場でのことは黙っていてください。 とにかく、涼宮さんはそんな思い付きの行為の為に、あなたを苦しめていることに気付いてしまったのです。この間の件でね。 それに高校三年の冬という時期は、涼宮さんでなくとも最後の思い出づくりにイベントの一つでもと、誰もがそう思うでしょう。 そんな大切な時間を削ってまで、大学受験に精を出す必要があるのかと。」 ――俺の時間を返せ!!―― 「そうか、じゃああの時の俺の言葉は本当に最低だったんだな。」 「まあ、僕はその時の会話を詳しくは知りませんが、あえて言っておきましょう。 ええ、最低です。」 ふふ、ありがとう、古泉。 「つまり、もう一度俺の口から大学受験がしたいと ハルヒと一緒に目指したいと。はっきり言えということだな。」 「はい、話が早くて助かります。これは言わば、一生を共にするあなた達が協同で挑む、最初の関門です。 僕はあなた達の成功を心から祈っています。」 今、あたしの隣にはみくるちゃんと有希が歩いている。後ろではキョン達が話し込んでるわね。 これならあいつには聞こえないかな。謝らなくちゃ。この二人に。 「みくるちゃん、それに有希。今日はごめんね。せっかくみくるちゃんが帰ってきたのに お祝い事の一つもしないで黙々と勉強始めちゃって。」 二人は驚いたように口をポカンと開けている。有希もこんな顔が出来るようになったのね。 「な、なに言ってるんですか。そんなの全然気にしてないです!東大なんてすごいです!憧れちゃいます! そして、それを目指してる涼宮さんとキョンくんはもっとすごいです!」 ふふ、未来でも東大は健在なようね。 「ありがと、みくるちゃん。……でもね、もういいかなって思えてきちゃったの。」 ふえ?って顔でみくるちゃんはまた驚いてる。有希はもう元の顔でこっちを見てるわね。 「だってあいつったらいくら教えたって成長しないし! 東大に入って偉い教授になろうだなんて思ってないし!………ただあいつと何かをしたかったってだけだもん。 キョンがいつもウザがってた、単なる思い付きよ…」 「じゃあそれを最後まで続けてください!」 う、何か押しが強いわね、このみくるちゃん。 「まだ言ってなかったっけ、この前のこと。」 そう前置きしてあたしは話し始めた。キョンに殴られた事、その後の事。 治り掛けの口の中がまた痛んだような気がした。有希も俯いて暗い顔をしている。 「そんな、キョンくんが…」 「あ、キョンを責めたりするのはやめてね。もうこれはこれで話はついたから。 ただ、気付いちゃったのよ。ずっとあいつはストレス溜め込んでたんだなって。 そう考えたら、段々と今の状態に意味がないんじゃないかって思えてきたの。」 ここまで言って深呼吸をしていると思わぬ方向から声が聞こえてきた。 「あなたは、今まで決めたことは最後までやり遂げて来た。 それがあなた。そんなあなたにわたしは惹かれてきた。 考えて。そして答えて。彼との共同作業はあなたの中で、どれほどの優先事項なのか。」 有希が珍しく自分から話しかけてきた。 「そうです。涼宮さんの思い付きはそんな簡単なものじゃないです。どうあっても覆らないはずです!」 「………」 あたしは口を紡いでしまった。みくるちゃんも有希も本気で心配してくれている。 だけど、勘違いよ、それは。あたしはそんな強い人間じゃ…… 「ハルヒ!」 後ろから声をかけてきたキョンのお陰で、あたしは次の言い訳を言わなくて済んだ。 「ハルヒ!」 俺が声をかけるとハルヒは暗い顔をすぐに怒った顔に変えた。おいおい、無理するなよ。 「何よ!」 「今日、このあとも勉強付き合ってくれないか?」 そういうとハルヒは驚いた顔のあと、振り返り長門と朝比奈さんに顔を向け、一つ頷いたように見えた。 そして振り返りなおしたハルヒの作り物の笑顔がすこしだけ真実味をおびたように感じた。 「いいけど!あんたン家だからね!受講代として夕飯を頂戴するわ!」 「ああ、すまんな。ただ親と妹は夜から出かけるからメシは早めになるぞ?」 もうすでにハルヒは腕を組んで仁王立ちだ。 「構わないわよ!そんなの!ほら!早くしなさい!皆また明日ね~!」 ハルヒは手を振りながらもう片方の手で、俺を引きずり――比喩じゃないぞ、これ。本当に引きずられている。 あり得ない程の靴の磨り減り具合だ――皆と分かれた。ハルヒ。明日は土曜日だぞ?最近は探索だってしてないじゃないか。それに週明けは冬休みだ。 そのあとの食卓では母親とハルヒから俺の脳細胞腐敗理論を聞かされたり――いやマジで今の俺には笑えない冗談だ―― しながらも楽しい時間を過ごすことが出来た。昨日は食卓でも気が沈んでいたが、これもハルヒのお陰だ。 「じゃあね~、キョンくん、ハルにゃん!おべんきょーがんばってね~」 妹たちを見送りながら俺は思っていた。 俺がハルヒを呼んだのは古泉に促されたからだけではない。 一人になってまた『奴』からの誘惑に戦うのが怖かったからだ。 「それじゃ始めようかしらね。」 今は俺の部屋だ。部屋にはいるなりハルヒは勉強することを提案してくれた。 「ああ、そうだな。ハルヒ 、ちょっといいか?」 「何よ、変なことしようだなんて思ってないでしょうね!いい?!恋愛は受験の敵なのよ! そこらへんの判断が出来ないようじゃ…」 ハルヒの喜々とした声は、それの半分ほどの周波数しかないんじゃないかと、 思えるほど小さい俺の声に遮られた。 「ありがとう」 ハルヒは目を点々と瞬きしながら状況の把握に全勢力を置いてるようだ。 俺は続ける 「お前のお陰で俺はここまでやって来れた。自信はぶっちゃけないが、最後まで精一杯やりきろう。 お前と一緒に東大を目指したい、心からそう思っている。」 気がつくとハルヒは涙を流していた。 「な、何よ…今さら…そんなの…当たり前でしょ!…… 分かりきった事…言ってんじゃないわよ…」 やれやれ、分かりきっていた表情にはとても見えないんだがな。 数十秒、沈黙が支配したあとハルヒは口を開いた。 「ねえ、抱き締めて…」 「何だ、お前がそういうことは受験が終わるまでしないって言ったんじゃないか。」 「うるいわねぇ…いいでしょ?抱き締めるくらい…あんたが…変なこと言い出すから…」 目の前にいるのはただのいたいけな少女だった。守りたい、こいつを、こいつに阻む全てのものから守りたい。 例えこれが、『奴』によって作られた関係だとしても。その少女の背中に手をゆっくりと回そうとした、そのときだった。 けたたましく下の階から電話が鳴り出したのは。おいおい、ムードぶち壊しじゃないか。 俺は渋々階段を降り始めた。後ろを見るとハルヒも付いてきてるようだ。 顔はもちろん不機嫌顔。頼むから後ろから足で突き落そうとかしないでくれよ。 電話は俺が以前お世話になった病院からだった。イヤな予感がする。 「〇〇さんのご家族の方ですね?実は……」 俺は次の言葉を聞いて受話器を落としてしまった。あのな、 俺は今まで不服にもハルヒの部下として宇宙人、未来人、超能力者達と日々行動を共にしてきたわけだ。 そんな中にいたからこそ大抵なことでは驚かないし絶望も感じない。だけどそれはカマドウマ退治や 異世界に飛ばされるなどという、非現実的な出来ごとに対して耐性が出来たのであって、 今回のような、至って現実的な、それでいて無慈悲で理不尽な出来事に対しての耐性は一般人と、さして変らないだろう。 いやこんなことが起きて平気な奴など、長門を除いた対有機生命体コンタクト用インターフェイスくらいだな。そう信じたい。 要するに俺は今、猛烈に動揺している。 「ちょっとキョン!どうしたっていうのよ!」 ハルヒもただならぬ俺の様子を察知したのかすごい剣幕で尋ねて来る。 「妹達が……交通事故に……?」 ぶらぶらと電話機に支えられてぶら下がった受話器からは、病院の関係者の声が遠めに響いていた。 六章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5950.html
涼宮ハルヒの異界Ⅱ さて、俺がハルヒから教えてもらった、この異世界人の名前は蒼葉(あおば)さん、と言うことだった。 俺たちとはまた違う別の世界からやってきた、その世界のとある機関のエージェントということらしい。 もっともこれ以上、詳しい説明は目の前の彼女もハルヒからもしてもらえなかった。 ハルヒは何でも知りたがる小学生に上がったばかりの子供のように詳しく聞いていたが蒼葉さんははぐらかすのみである。 「この厄介事が片付いたらもう会えることは0に限りなく近い確率でほとんどなくなるから知る必要もないわよ」 これが蒼葉さんの答えだった。 なるほど確かに理にかなっている。 異世界に行くにはどうすればいいか。 それはもう空間を越えるしかなくて、また異世界の数も天文学的な数であるから、万が一、他の異世界とやらに行けたとしても、そこが蒼葉さんの住む世界とは限らないのである。 なぜなら異世界に通じる扉というものは存在しない。つまり奇跡に近い偶然を通り抜ける必要がある訳で、それにプラス異世界の数を思えば確かに蒼葉さんの言うとおり、俺たちが再会する可能性は限りなく0に等しいものとなる。 いくらハルヒに確率論が通用しないと言っても天文学的数字の天文学的数字乗をひっくり返すなんて無茶なことはさすがにできないことだろう。 だから彼女のことを詳しく知る必要もないし、また蒼葉さんも俺たちについては何も聞いてこないのである。 「そう言えば、蒼葉さんはどうしてこの世界に?」 ハルヒのパパラッチ並のしつこい尋問を冷静な表情で涼やかにさらりと流し続けていた蒼葉さんに俺は尋ねた。 彼女の視線がこちらを向く。 「私たちの世界を救うために来た」 笑顔の彼女の答えは簡潔だったがその瞳には決意めいた固い意志の光が灯っていた。 「世界を救うため?」 「そうよ。んまあこれは話してもいいわね。今、私たちの世界は存続の危機に立たされたの」 何でまた? 「時空にこの新しい世界が生まれつつあるからよ。それが今回はたまたま私たちの世界と隣接してた。んで.、この世界が誕生すると私たちの世界はその余波で吹っ飛んでしまうってわけね。正直危なかった。もう少し遅れてたらアウトだったわ」 「この世界が生まれる? この世界はまだ誕生してないってこと?」 ハルヒが尋ねる。 「そうよ。この世界にはまだ『壁』があったからね。半径およそ2キロメートル。ちょうどこの建物が経っている敷地全体を覆ってるって感じね。それさえ破壊されない限りはまだ時間は残されてる」 なるほど、あの見えない壁のことか。ハルヒの精神状態不安定から来る閉鎖空間は半径5キロとか古泉は言っていたが、新しい現実世界の誕生は半分以下くらいに縮まるのだろうか。そう言えば前にハルヒがいた時も学校の敷地に沿って見えない壁があったか。 ん? ちょっと待て。あれは誰が壊せるんだ? 「さっきいた、あの青白い巨人が壊せるのよ。あんたたちの世界だとあいつらのことを何て言うか知らないけど、私たちの世界の言葉で言えば『境界を破壊する者』かな?」 ……んなマンガみたいなカタストロフネタがあるもんなんだな……まあこの世界に来ている時点で俺の常識論も通用しないのだろうか。思わず蒼葉さんの言葉に納得してしまったね。 そう言えば、どうして俺たちにあなたの言葉を理解できるんです? まさかあなたが日本語を知っているとは思えないのですが。 「ニホンゴというのが何の言語を指しているのか分かんないけど、まあお互いの言葉が分かることに関して言えば大した理由はないわ。補正ってやつよ。確か何かの娯楽読み物(ペーパーバック)で、別の国の人同士の会話で通じてるの見たことあったし、それと同じなんでしょ」 ……納得できないけど納得するしかないのだろうか? 気がつけば、俺たちは再び校庭に辿り着いた。 「ねね、蒼葉さん! これからどうするの?」 蒼葉さんに嬉々として問いかけるハルヒ。 そう言えば、あの《神人》たちは消し飛ばしたわけだが、それでもこの世界が消えたわけじゃない。 つまり、蒼葉さんの住む世界の危機が過ぎ去ったわけじゃないということと同意語なんだよな。 いや待てよ? あの《神人》たちが消え去ったら、この世界の閉鎖は解かれて通常に戻るんじゃなかったか? マジで古泉か長門が説明しに来てほしいのだが…… 長門……か…… 俺は何気なく校舎を見上げる。思い出すのは去年の5月のこと。あの向こうの世界とこっちの世界でのチャットである。 新校舎の方は半分以上が破壊されているので、ここからでも旧館がよく見える。もちろん、その一角に位置する明かりの灯った文芸部室の窓もだ。 そう言えば電気を付けっ放しで来たな。 「そうね。まずはこの世界の『創造主』を見つけたいところね」 「創造主?」 蒼葉さんとハルヒが話し合いをしている姿を横目に捉えて―― しかし、俺の方も旧館・文芸部室に行く訳には行かなかった。 こんな場所で単独行動をハルヒは勿論、雰囲気から察するに百戦錬磨っぽい蒼葉さんが許してくれるとは思えない。 「そ。人どころか生命体が何一ついなくても、創造主は必ずこの世界にいるはずなのよ。でないと世界ができるわけがない。だから創造主を見つけて、出来れば話し合いで解決したいところね。この世界の誕生は勘弁してください、って」 「なるほど。でも話し合いで解決しないときは――って、考えるまでもないですね」 「を? 分かるの?」 「そりゃまあ力づくしかありませんから」 「まあね。穏便に済ませたいけど、そうもいかないときは――ね。その創造主がどんな姿してるか分かんないけど、どんな姿かたちだろうと躊躇する気はないわ。さすがに創造主がいなくなればこの世界は消失してくれるからね。この世界にまだ息吹は感じないから罪悪感も湧かないし」 蒼葉さんの殺意さえ漂わせた真剣は眼差しは俺の背中に冷たい汗を浮かばせるには充分だった。 い、今……さらっととんでもないことを言ったよな……本気か……? むろん怖くて聞けないが。 「だったらさ!」 ハルヒが勢い込んで蒼葉さんに言い寄り、 「あたしたちも手伝います! 何かの役に立てるかもしれないじゃないですか!」 「……遊びじゃないのよ?」 「もちろん解ってますって! その『創造主』とやらを探すだけです! 見つけたら即座に蒼葉さんを呼びます! 危ないことはしません!」 おいおい。んな好奇心いっぱいの今からどこか楽しいところに遊びに行くような笑顔で提案したって蒼葉さんがげんなりした視線を向けるだけだろが。もっと深刻そうな雰囲気で言えよ! などと心の中でツッコミを入れる俺なのだが。 「……そうね……私も背に腹は変えらんないし……」 って、承諾ですか!? しかもハルヒはご丁寧に『あたしたち』と言ったのである。当然、俺も協力せざる得ない。 しかしまあ、正直なところハルヒを蒼葉さんに付き出すだけでいいのだが…… いかんせん、それが正しいことなのかどうかが分からん。 なんせ、それを蒼葉さんに言うということは、ハルヒに自身の不思議パワーを自覚させることでもあるんだからな。 ましてや蒼葉さんは相当物騒なことを言った。 仮に自分の能力を自覚してもハルヒがこの世界を消す方法を知ることができるとは限らん。もしこの世界の消失方法をハルヒが思い浮かばなかったときは蒼葉さんはまず間違いなく躊躇わない。 異世界のまったく知らん一人の命より、自分の世界すべての命を取ることだろう。もしハルヒが蒼葉さんの命を救った恩人ならともかく、さっきの対《神人》戦のときは俺たちは何の役にも立っていないし、蒼葉さんは、ハルヒ曰く《神人》全てを殲滅させたのち、ハルヒに声をかけられてやっと俺たちに気付いたほどだったらしいからな。 「じゃ、これをそれぞれ持ってくれる?」 蒼葉さんはハルヒと俺にそれぞれ何か小石くらいの大きさのしかし滑らかで厳かな光を放つ宝石のような水晶を手渡してくれた。 「それを肌身離さず持っててね。何か見つければその魔石――石に念波を送って頂戴。それで私は感知できる。すぐそっちにテレポートするから」 きゃっ! すご! そんなアイテムがあるんですか!? ていうか、これ貰ってもいいの!? と、ハルヒが満面の笑みでそんなことを口走るんじゃないかと思ったがどうやらそれは杞憂に終わったらしい。 「分かりました。何か見つけたら必ず蒼葉さんに知らせます」 随分と真面目な声で返している。もっともその表情には好戦的な笑みが浮かんではいたが。 「キョン、あんたもいいわね?」 「あ、ああ」 いきなり俺に振るハルヒに、少しどもって首肯する俺。 そんな俺たちの様子に蒼葉さんはどこか微笑ましいものを見る笑顔を浮かべていた。 む……なんか恥ずいぞ…… しかし即座に蒼葉さんは気を取り直し、 「んじゃあ、あなたたちはそこの建物の中をまずは探してみて。あのボーダーラインがこの建物を中心に半径2キロくらいであるし、核ってものは力場のほぼ中心にあるものなの。おそらくこの建物の近くに創造主がいるはずよ」 「はい! よしキョン! あんたは旧館を探しなさい! あたしはまずこっちの新館を見て回るから。んでこっちに何にもなかった時は、一度中庭で合流! んで今度はあたしが旧館で、キョンが新館をくまなく探す! それの繰り返しよ! いいわね!」 それでいい。 というかハルヒにしては珍しく理にかなった合理的な考え方だ。人によって視点が違う訳だから二つの視点で探せば、同じ場所だろうと一方が見落としたことでももう一方が見つけられるかもしれんからな。しかも二手に分かれて俺はまず旧館なんだ。これは願ったり叶ったりというやつだ。 言うと同時にハルヒは半壊状態の新館へと駆け出した。 つられて俺も旧館へ向かおうとするが―― 「そう言えば、蒼葉さんはどうするんです?」 肩越しに振り返り問う俺に、しかし蒼葉さんは背中を向けたまま校舎の反対側。グランドの方を見つめて、 「私は――こいつらの相手をする――」 ――!! 緊張感あふれる声で答えてくれた蒼葉さんの眼前では、再び、二体の青白く輝く《神人》がせりあがってきたのであった。 ハルヒがこの世界にいる限り、あの《神人》は意地でも世界を誕生させようと破壊工作に勤しむのかもしれん。 だからまた出てきたのだろう。 まあ、蒼葉さんの強さはハルヒの話からすれば古泉が集団でかからないと歯が立たないアレをたった一人で七体一度に消滅させるほどだから心配はいらないだろうが。 それよりも俺はやらなきゃいけないことがある。 向かう先は旧館三階・正式名称・文芸部室にしてSOS団の寄生部屋だ。そこのパソコンに用がある。 ほどなく到着。即座に電源スイッチオン。 ジジジ……と静かな音が流れフェーズアウトした画面に見つけた! 懐かしいこのメッセージ YUKI.N>みえてる? 予想通りだったぜ。長門なら必ず連絡を入れてくれると思っていたよ。ただ古泉が現れたなかったことが少々気になるところなのだが、今はとりあえず置いておこう。 『ああ』 俺はあの時と同じやり取りを始める。 YUKI.N>今回はこっちの世界とそっちの世界の連結が断たれる気配はない。おそらく涼宮ハルヒは二つの世界の誕生と存続を望んだ。 『なんだそりゃ?』 YUKI.N>今日、あなたも感じたはず。涼宮ハルヒの精神状態は最高レベルで維持されていたことを。ゆえに新世界を形成した。 『待て待て待て待て待て。てことは何か? ハルヒは「もう一つこういう楽しい世界がほしい」とか思って、こっちの世界を創り出したってことか?』 YUKI.N>その認識は正しい。そしてそっちの世界が誕生と同時にこっちの世界と連結される。世界が面積ではなく概念量質的に広がることを意味する。これが古泉一樹がそっちの世界に現れない理由。彼――正確には彼の所属する機関が「今回は世界崩壊の危機ではない」と判断しているため、古泉一樹はそっちの世界に行くことへの協力を拒まれている。涼宮ハルヒがこっちの世界から消える意思がない以上、情報統合思念体も気にしていない。むしろ観察対象である涼宮ハルヒの新しい情報奔流能力を見るいい機会ということで注視しているほど。 『この世界を消失させるにはどうすればいい? こっちにはそっちの世界とはまた別の世界から来た人がいる。この世界の誕生で、その世界が滅ぶと教えられた』 YUKI.N>どうにもならない。世界誕生は涼宮ハルヒの意志。涼宮ハルヒが望まない限り、その世界が消失することはない。ゆえに青白い巨人は涼宮ハルヒがそっちにいる限り無限に生まれる。 『それでも何とかしようとするには?』 YUKI.N>涼宮ハルヒをそっちの世界から消失させること。手段は問わない。 ……やっぱり、そういう結論なのか…… 俺はそれ以上、カーソルを進めることなく、がっくりと椅子の背もたれに背中を預けた。 さらにしばらく時間を置いてから、俺は中庭に降りて行った。 そこにはすでにハルヒが腕を組み、仁王立ちで俺を出迎えてくれていた。 「首尾は?」 「何も」 「なら次はあんたが新館。あたしが旧館よ」 言ってハルヒが旧館に向かおうとした矢先、 天地がひっくり返ったかと思うほどの突き上げるような地響きが俺たちを襲ったのであった。 まあ無理もない。ふと横を見てみれば、これまた突然わいてきたとしか思えない《神人》が一体、新館を後ろから破壊し始めたのである。 って、おい! こんなところまで発生してるってことは…… いやな予感を胸に、俺は新館ではなく校庭へと駆け出した! 「ちょっとキョン!」 ハルヒも付いてくる。 そして新館脇を抜け、いきなり青白い光が視界いっぱいに開けたと思った時、俺は信じられない光景を目にすることとなった。 いったいどれだけ長門とやり取りしていたかは分からない。 それほど長い時間でもなかったと思っていたのだが―― 校庭では、打ち倒された《神人》たちが校庭を埋め尽くすほど累々と横たわり、その全てが透明感をさらに薄くさせて消滅しかかっていたのである。 が、そんなものは大したことじゃない。いや、大したことではあるのだがすでに倒された分は本当に大したことじゃない! さらにその向こうにまだ数体いるのである! 「蒼葉さんは!?」 ハルヒの声で俺は周囲を見渡す。しかし彼女の姿はどこにもない! どこだ? まさか押しつぶされたとか言うんじゃないだろうな? 悲観的な想像がわき起こったりもしたのだが、 「キョン! 上よ!」 叫ぶハルヒが両手で俺を無理やり上に向かせる! んな!? そこに蒼葉さんが飛んでいた! 宙に浮いているのだ! 初めて見たが、これが魔法!? マジで使えるのか!? 信じられないのも無理ないってもんだぜ。 確かにハルヒは蒼葉さんが超能力=(表現はされていなかったが)蒼葉さんの言葉を借りるなら『魔法』を行使すると言っていたが今、目の当たりにしてもまだ信じられん! まるで漫画かゲームの世界にいるみたいだ! 「ライツオブグローリー!」 そんな俺の心の葛藤を余所に、蒼葉さんの右手から放たれた眩いばかりの光の――もうレーザー砲と言っていいだろう! とにかく光の巨大な光線が新館と旧館の間に現れた、俺とハルヒが見たあの《神人》を呑みこむ! 立て続けざまに宙に浮いたまま振り返り、 「ダイヤモンドダストスパイラル!」 ロッドを振り降ろし、放たれたのは雪の結晶が竜巻に撒き散らされている、見た目で判断させてもらうが、吹雪以上の凍てつく暴風! 《神人》数体の緩慢な動きがさらに緩慢になっていき――やがて完全に凍りつく。 そこへもう一発! 「ブレイズトルネード!」 もう一度、勢いよく振りかざしたマジックロッドから、今度は業火を渦巻く竜巻が《神人》の氷彫刻を破壊した! 再び、世界に闇と静寂が訪れて、蒼葉さんが着地する。 もうすでに校庭に倒された《神人》の屍は消滅していた。 あまりの奇想天外な出来事に俺は半ば茫然としていて、蒼葉さんの首筋に汗が滴っていることに気づきもできなかったのだが―― !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! どうやら世界の沈黙は一瞬だったらしい…… 再び、校庭の向こう側に《神人》が一体、浮腫み上がってきたのである。 涼宮ハルヒの異界Ⅲ